春が来た。全国的に桜の開花が、例年よりも一週間程度早まった今年。秋田では、花が散るとともに、新芽が顔を出す4月21日に、2026年度最初となるソウゾウの森会議が開催された。第22回となる今回は、プロジェクトが新しい章に入ることを知らせるキックオフ回。昨年末に開催された「ソウゾウの森大会議2025」で手を挙げ、活動テーマに集いチームとなった面々を中心に、平日の夕刻ではあったが30名を超える参加者が集まった。
「かたち」をつくるコミュニティ
冒頭に国際教養大学の工藤尚悟さんよりイントロダクションがある。
まず語られたのは、ソウゾウの森会議のフェーズが変わるということ。2022年から計21回、秋田の様々な土地で風土を感じながら会議を開催してきたことで得られた発想やアイデアと、参加者同士のつながりをもって、次なる段階では「かたち」にすることにこだわりたいという工藤さん。コミュニティの醸成から、プロジェクトの推進へ。そのためには、会議というイベントだけでなく、具体的に構想し、行動していくコミュニティをつくる。その名も「かたちかたち」。
「『かたち』という言葉には、当てはめられる漢字がいっぱいあります。形、型、象、容……それをみて、まるでソウゾウの森のようだなと思ったんです。あるチームは製品を作ってかたちにする。あるチームはフィールドワークのような体験をかたちにする。あるチームは森との向き合い方をかたちにする。それぞれのかたちがチームごとに生まれてくる。そんなことを思って『かたちかたち』という名前にしました」
それに対して「もうひとつ意味があるんですよね」と株式会社Q0の林千晶さん。「私はこの名前を聞いたとき『”かたちか”たち』だと思ったんですよ。かたちをつくる人(かたち”家”)たちのコミュニティにぴったりの名前だなって」名前の考案者である工藤さんは想定していなかった意味だというが、枝が伸びゆくように想定していなかった広がりを見せるのがソウゾウの森会議らしいと感じる。

続けて、工藤さんより「2、3年後にこんな景色が見られたら」と共有されたのは、2025年に参加したというHelsinki Design Weekの写真。工業製品やアート作品などを展示する場に加えて、トークセッションが興味深かったと言う。どんなことを考えて作品をつくったか、デザインにどう関わっているかという話を皆で聞き、全体で話す。その対話自体が作品のように感じたという。「皆さんがこれからつくっていくかたちをお披露目する場として、Akita Design Weekのようなことができたら。そんなゴールを見ながら、皆さんとご一緒できたらと思っています」と導入を締めくくった。
事業化=続けるために何が必要かを考えること
続いて、林さんから「具体的にどう進めていくか」についての説明がある。

語られたのは、これからチームが進めていくのは「事業化である」ということ。ここでの「事業」は単に個人事業や法人化を意味せず、工藤さんが言う「かたちにする」を林さんなりに言い換えたものだ。「プロジェクトをやろうとしているのに事業化と言われたら戸惑う人も多いんじゃないかと思う」との前置きがありつつ、「じゃあプロジェクトをやり続けるために何が必要か。それは人や物が動くこと、そのためにいくばくかのお金が循環していないと続かないんです」と林さん。だから、今回のコミュニティで行っていくのは「事業化支援」である。チームが事業化する、その支援をしていくことになる。
具体的な活動の中心となるのは月1回開催予定の進捗共有ミーティング。内容は、林さんやその起業家仲間によるレクチャー、チームによる進捗共有、チームが抱えるイシュー(課題)についての議論といったもので構成される。「どうやったらいいのかわからないことがたくさん発生すると思うんです。それを、毎月集まってメンバー全体で共有し、受けたフィードバックをもとにチームが判断する。そうした小さい判断を積み重ねていきたいと思っています」と林さんが言うように、コミュニティ内でチーム同士が相互に影響し合うことが想定されている。そのために、日々のコミュニケーションをするためのプラットフォーム、やりとりを促進するための役割としてコミュニケーターが用意されるとのこと。
まずは5月、6月とチームの状況を把握するためのプレミーティングを行い、7月から本格的に事業化支援のためのプログラムを開始する。
変化するソウゾウの森会議の位置づけ
今年度からコミュニティを軸に展開していくことが発表されたが、気になるのはソウゾウの森会議の位置づけ。それについても林さんから共有がある。
まず、国際教養大学と株式会社Q0が主体となり、地域主催者が運営を担ってきたこれまでと異なり、ソウゾウの森会議はチーム主体での開催となること。事業化を進めていく中で、チームが必要なタイミングで会議を企画し、ゲストを招聘し、参加者を募って会議を開催することになる。決められた日程(2026年度は9月、10月、2月)から選び、会議を主催するチームには運営にかかる予算が渡される。
林さんから会議の使い方について補足がある。「皆さん、できるだけ後ろの日程がいいんじゃないかと思いがちなんじゃないかと思うんです。けれど実はそんなことはなくて。ソウゾウの森会議って、大勢の人たちが参加してくれる会なんです。そこで『皆さん、私たちのアイデアについてどう思いますか?』と問いかけることもできる。インプットをする場として捉えれば、具体的にアクションを起こしていく前でも活用できるはずです」
その言葉どおり、ソウゾウの森会議の新しい側面が見られるかもしれない。
また、今年度も大会議が12月に計画されているとのこと。そちらも、今年度からの動きに伴ってどのように進化するのか、楽しみだ。
浮かび上がる、それぞれの現在地
その後は、各チームが主体となる時間へ。まずはチームから改めてテーマの紹介、加えて2025年末の大会議からのアップデートがある。

昨年12月の大会議からの進捗はチームごとに異なる。定期的にミーティングをし、プロジェクトのゴールとしての展示を考えているチーム。秋田県の予算を申請し、夏頃にフィールドとなる山でのイベントを企画しているチーム。参考となる活動を行っている秋田県外のプレイヤーに会い、ヒアリングを行ったというチーム。挙げたのは一例だが、それぞれが目指す場所を明確にするために、到達するために少しずつ手足を使いながら動き始めていることがわかる。
また、会議の後半では現状考えていることを「アクション」「マイルストーン」に落とし、2027年度までのタイムラインに置いてみるワークが行われた。またその中で、どのタイミングでソウゾウの森会議を開催するか、も検討することが促された。

さあ、ここから始めよう
今年度から大きく変化するソウゾウの森会議。その中で動いていくチームがいま何を考え、何を悩んでいるのか、発表を通じて、それぞれの現在地が浮かび上がった。計画が具体化し動き出しているチームもあれば、長い時間軸の中でリサーチに取り組むチームもある。構想がまとまったチームもあれば、まだ対話の途中にいるチームもある。
いずれのチームにも共通して挙げられるのは、事業を持続させていくために必要なリソース(人、物、金など)をどう獲得していくか、それがこれからの課題になるということ。それぞれがどう道筋を見つけるのか、それを見つける過程でコミュニティ内で協働できるかが鍵となる。
コミュニティ「かたちかたち」の誕生、チームが主体となって運営するソウゾウの森会議、将来的なAkita Design Weekの開催——次なるフェーズの構想が共有され、動き出す準備が整った。キックオフのこの日に語られた言葉や問いが、秋田の風土の中でどのように育ち、形を変えていくのか。それを見届けるための1年が、静かに、確かに始まった。
開催概要
【開催日時】
2026年4月21日(火)17:30〜19:30【場所】
国際教養大学 D棟 1F D101・102【参加者】
34名
秋田 COI-NEXT拠点 ソウゾウの森会議
主催:公立大学法人国際教養大学
共催:株式会社Q0
運営:合同会社根子商店
連携:公立大学法人秋田県立大学、公立大学法人秋田公立美術大学